ラノベ作家の年収はいくらなのか?

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ライトノベル作家の魅力とは何でしょうか?

一発当てれば夢の印税生活! アニメ化ともなれば声優にも会えるかも?

それは、ある意味では正解であり、またある意味ではまるで的外れなイメージです。それでもライトノベル新人賞には毎回数百から1000以上の応募作が集まり、たくさんの人がデビューをかけて実力を試しています。応募するにはいたらずとも、作家になりたい、ライトノベルを書いて暮らしたいと考える人はもっと多いはずです。

最近ではWEBの投稿サイトを中心に活動する人も増え、商業作家としてデビューするルートは昔より増えました。なかには商業活動にあえて距離をとり、独自の創作を信条とする人もいます。が、やはり小説家をこころざす以上、小説で飯を食おう、小説で御殿を建てよう、と考える人は決して少なくないでしょう。夢想家でなくしてどうして小説が書けるでしょうか。

では、そんな多くの人が夢に見て、そうなろうと願う憧れの職業「ライトノベル作家」。その年収にスポットライトを当てて、ライトノベル編集者が知るかぎりの実情をご紹介します。

ライトノベル作家と年収

ライトノベル作家の年収は、ピンキリです。

稼げる人と稼げない人にはっきり二分されます。ほどほどに稼げる人というのはあまりおらず、大きくドカンと当てて個人事務所を設立しないと税金が大変なことになってしまう場合と、そもそも本が出ないため作家としての収入はかぎりなくゼロに近づく場合と、両極端です。

仮に新人賞からデビューしたとして、どれくらいの収入が得られるのか計算してみましょう。

 

収入の計算(成功例)

たとえば仮に、シリーズ初版が15,000冊印刷したとします。印税は気前よく10%としましょう。

計算しやすいように定価:税抜き600円とします。デビューは分かりやすく、1月とします。

まず、新人賞を獲得した賞金が支払われます。

優れた賞を獲得して+100万円。

そして、第1巻の発売です。

(1巻初版:1月)600円×10%×15000=900,000円

さらに1巻の発売からほどなくして、重版がかかりました。好評だったので5000部増刷です。

(1巻増刷:1月)600円×10*%×5000=30万円(累計部数20000)

さらにさらに、1巻が発売されてから3ヶ月めに第2巻を出しました。1巻はすでに増刷をしているので、1.5+5kの2万冊が世に出ている計算です。それを基準に2巻の初版は計算されるのが通例で、18,000冊からスタートすると仮定します。値段はすえおきで600円です。

(2巻初版:4月)600円×10*%×18000=108万円

同じペースでいくと、7月に第3巻が発売する計算です。ただし好調のシリーズなので7月までの間に既刊の重版があったとしましょう。3巻の初版部数は、18000部ではちょっと足りません。

(1巻増刷:6月)600円×10*%×5000=30万円(累計部数25000)

(2巻増刷:6月)600円×10*%×5000=30万円(累計部数20000)

(3巻初版:7月)600円×10*%×19000=114万円

続けます。

4巻も発売してますます勢いアップ!

(1巻増刷:9月)600円×10*%×10000=60万円(累計部数35000)

(2巻増刷:9月)600円×10*%×8000=48万円(累計部数28000)

(3巻増刷:9月)600円×10*%×5000=30万円(累計部数24000)

(4巻初版:10月)600円×10*%×22000=132万円

これくらい売れていると、電子書籍の売り上げからもけっこうな収入が発生しているはずです。出版社との契約の仕方のほか、電子書籍プラットフォームの仕組みによっても多少の変動はありますが、本が一冊売れることで作家に入ってくる手取りはおおむね変わらない(電子書籍で売れたからといって額面上の損をするということはない世界)という前提で話をすすめます。

仮に電子書籍が各巻の紙の売れ行きの30%ほどだとしても、電子書籍からの収入概算は

600円×10%×(35000+28000+24000+22000)×0.3=196万円

ここまでを合計すると、しめて

968万円

になります。1000万円にほど近いですね。デビュー初年度の年収として、なかなかの好成績ではないでしょうか。

実際には、これくらいのヒットだとコミカライズの打診は来ていてもおかしくありません。したがって、原作の権利をレンタルする料金も発生します。そのコミックの売れ方次第ではありますが、収入を足せば1000万円を超えることもありえます。

特別な贅沢をしなければ家族を養うことは十分にできるでしょう。審査は通りにくいかもしれませんが、持ち家をかまえることだって夢物語ではなくなってきます。節税も考える必要にせまられるでしょう。

収入の計算(残念例)

続いて、おなじライトノベル作家でも『キリ』に属するケースも試算してみます。

デビューを決めたレーベルがまず賞金を払います。ここは同じ条件で100万円としましょう。

+100万円

さて第1巻の発売です。ページ数が薄いので定価は580円。印税は8%で契約しました。なんと大盤振る舞いで、部数は新人扱いとは思えない破格の30000冊スタート。印税が楽しみです。

(1巻初版:1月)580円×8%×30000=1,390,000円

成功例の試算をこの時点で超えました。よかったよかった、良いレーベルからデビューできたぞ。と、思いきや。

続いて第2巻の発売です。しかし改稿に手間取り、刊行したのは5月のことでした。1巻は増刷がかからず、オリコンランキングの上位100番以内には一度も入らないくらいの売り上げです。それを考慮して2巻の初版は、1巻の初版より大幅に絞りこむべしという営業判断がくだされました。結果、

(2巻初版:5月)580円×8%×12000=560,000円

1冊書いて、56万円の収入です。これが多いか少ないかは、3巻の試算を見てから考えてください。

さて、3巻は原稿はすらすら書けました。出来も良かったと自負しています。しかし、イラストレーターが急な病に倒れるなどして不測の刊行延期に見舞われ、ようやく出版できたのは年末のことでした。

(3巻初版:12月)580円×8%×6000=280,000円

さいごに電子書籍からの収入をプラスしましょう。人気作にはなれなかったので、紙の総発行部数の10%が売れれば御の字という前提の計算です。

580円×8%×(30000+12000+6000)×0.1=22万円

ここまでをすべて足すと、

345万円

となります。345万円が多いか少ないか、人によって判断は分かれそうです。本業がある方が副収入としてこれだけ手にすることができれば、悪い商売ではないかもしれません。

ただし、成功例と比べると、実に600万円以上の差があることには目をつぶる必要があります。

また、キリとは言っても本当の本当の『ザ・キリ』はこんなものではありません。誰しも一度は聞いたことがあるあの不吉な単語「打ち切り」のうきめにあえば、300万円ですら大金に思える金額=年収になります。

2年目からの残酷物語

ライトノベルで生計を立てていこうとするなら、デビュー一年目のことだけ考えていては不十分です。むしろライトノベル作家の年収は、ピンとキリとで2年目からさらにくっきりと分かれてきます。

成功例の2年目

執筆速度にもよりますが、売れっ子作家として並行した新シリーズを手掛けるようオファーが来るかもしれません。そちらもデビュー作と同じくらい売れれば、単純に年収は2倍かそれ以上になっていくと見込めます。

また、コミカライズ以外の権利収入も期待できます。グッズの売り上げが増えると、チャリンチャリンとお小遣いがふえつづけます。押しも押されもせぬ大ヒットになってくると、こうした収入だけで数百万にも達し、本を書こうが書くまいがしばらく食べるには困らないほどになるとも聞きます。

もちろん人気があるので既刊はますます売れ、続刊は初版部数を積み、電子書籍もどんどん売れます。ペースを維持して刊行し続けられれば、2年目の年収は2000万円を目指せるかもしれません。

ただし「安定した収入」という言葉とは基本的には無縁と考えましょう。そもそもライトノベルがライトノベルと呼ばれるようになってからそれほど長い歴史はなく、「一生をライトノベルだけで食べてみせた」という真の意味での成功者はまだこの世にひとりもいません。

残念例の2年目

残念例に属するライトノベル作家の、2年目の年収はきびしいです。まず、デビュー作は3巻で打ち切りがきまり、2度目の春に4巻が出ることはありませんでした。収入ゼロです。

電子書籍の売り上げもゆるやかになり、数ヶ月に一度、数千円以下の臨時収入があるかないかです。

デビュー後はじめてのオリジナル新企画は、企画立案に難儀して、編集者がなかなかOKを出してくれません。半年かけて企画がとおり、書きあげたのが一か月後。そこからようやく編集者がイラストレーターを探しはじめて、なかなか起用にいたらず、ずるずると引き伸ばされます。

待ちに待った新企画第1巻の刊行は、なんとか年内ぎりぎりにすべりこみセーフでした。ところが、前作がふるわなかった実績を考慮し、初版はレーベルの標準的な部数よりも控えめになってしまいました。結果、手にしたのは80万円ほど。成功例との格差はこうして開いていく一方です。

さすがにこれでは、専業作家として生計を立てていくのは困難といわざるをえません。バイトをして口にのりをするか、本業があればそちらに注力するか、あるいは執筆を中断するか、大きな悩みに直面すると思います。キリの作家にとっては、まるで食えない職業といえます。

印税生活の光と影

印税生活。なんとも夢のある言葉です。多くの人がそのワードの魔力にひかれ、試練に挑み、うちひしがれたり、現実のものとしたり、さまざまなドラマが繰り広げられてきました。ライトノベルにも同様に、成功すれば夢の印税生活が待っています。重版がかかりつづけるような大ヒットコンテンツを生みだせば、不労所得の獲得に成功したも同然です。ところがほんのちょっとの違いで、急に人生そのものを棒にふりかねないリスクもはらんだゆめまぼろしともなりかねません。だからこそ賭けるに値する、本当の夢なんだ!という意見もあるでしょう。

創作のロマン。創作と生活。そして、本気の夢を本気であきらめない人。これからのライトノベル業界には、そのどれもが欠かせません。

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