小説を書くにあたり、知らなくても困りはしないけど、知っているだけで文章の見ためがよくなる決まりごとがあります。一度でも小説の書き方を調べたことがある人なら自然と知っていることばかりかもしれませんが、いつでも読み直せるようにまとめておきます。
表記法
行頭あけ
小学校の作文で習う、文章作法の基本中の基本です。ひとまとまりの文章がはじまる目印になり、読みやすさが生まれます。
あけるスペースは、全角の空白1マス分と決まっています。半角スペースではだめです。
ワードで作成したファイルをプレーンテキストに出力する際、設定によっては全文の行頭スペースがなくなってしまうという現象がまれに発生するので注意をしてください。
行頭にかっこが入るときは例外として行頭のスペースを省きます。
また、文が複数の行にまたがって途切れなく続いている場合も、わざわざすべての行頭にスペースをいれなくて大丈夫です。
文章のはじめにダッシュ「―」という記号を用いるときも、全角スペースは不要です。
ただしプロの作家さんでも全角アキ+ダッシュという表記の方もいますので絶対ではありません。おなじ作品内で統一したルールがあれば、それが正解になります。
約物(やくもの)
やくものとは、日本語文章の記号のことです。「かぎかっこ」とか、(かっこ、まるかっこ)とかの有名なものから、<やまかっこ>や《ふたやま》など、色々なものがあります。
あらゆる文章に登場する「、」「。」などの句読点もやくものに含まれます。
ダッシュ(またはダーシ)は、ライトノベルでよく見かける表現方法です。余韻をもたせたり、急な印象をもたせたりするなど、文章に変化をつける効果を狙って使われます。
ニーズ、ポーズなどの音を長く引き伸ばす表現は「ー」と書き、「―」とは区別されます。「ー」は長音記号、またはオンビキなどと呼ばれることが多いです。
活版印刷の仕組みとして「ー」と「―」を区別する必要に迫られて、ダッシュを2倍に伸ばした版が作られたことからダッシュはいまでも2の倍数単位で用いられるという決まりが残っています。
「……」これもライトノベルでよく見る手法です。1マスにちいさな点を3ついれたものを特に「三点リーダー」と呼び、これもダッシュ同様に2マス分を一単位として使うのがお約束です。
文の途中に?とか!とかが出てきた場合は、そのすぐあと1マス分を全角アキにします。
例
「受賞決定? やったぞ!」
例外として、セリフのなかに感嘆符を含む場合でもカギカッコの直前に来る場合などはスペースはいりません。
句読点
句読点の使い方は、小学校までの国語を習っていれば問題なくわかるはずです。
ただし、小学校の教科書はこのルールに反しているので混乱が生じます。セリフのなかの文末に、句点がついているんですよね。商業出版のルールは、国語の教科書通りではない部分もあります。中には現役のプロ作家にも、句点+カギカッコをこだわって使い続けている方もいるにはいます。最終的には自分ルールの統一で対応してください。
句点の例外としては、逆にカギカッコの直後に句点がくるのがふさわしい、というケースもあります。
「ラノベ」「白銀騎士団」「からあげ定食」など、カギカッコで名詞を強調している語が文章の最後にくる場合、その閉じかっこは文章全体を終わらせる意味を持っているわけではありません。そういう時は例外としてカギカッコで文章を終わらせず、句点をつけたほうが良いでしょう。
漢字の使い方
漢字を使う時、つかわないとき
一般的な表記ルールにしたがえば、漢字は「概念を表すものの時に」使うものです。
名詞、動詞、形容詞、形容動詞など、文法上ひとまとまりの意味をもつ言葉の仲間はなるべく漢字を使って表現しましょう。
一方、名詞の中でも形式名詞や補助動詞にあたるものはひらがなで書いたほうが読みやすくなります。
このように「~みる」のような補助動詞は、漢字にするかしないかで意味も変わってくることがあります。
数字の表記
縦書きのための数字
縦書きは原則として漢数字を使うのが好ましいとされています。しかし、必ずしもそれが絶対の正解というわけでもありません。
たとえば、作中で登場人物がデジタル時計で時刻を読んだ、という描写があったとします。そのときは作者のこだわり次第で、縦書きでも数字で表現するということもありでしょう。
年代に関する表記、時刻に関する表記、量に関する表記、数を数えるときの表記、それぞれがバラバラでもかまいませんが、おなじ概念同士は統一したルールになっているほうが洗練された文章になります。
口語表現の推奨
意外と使いがちな文語表現
~のごとき、~のごとし、などは古めかしく固い表現です。雑誌でも小説でも新聞でも、平易で簡潔な文体が推奨されます。たとえば「~ごとし」は、~のような、という簡単な言い換えが可能です。ほかにもどこか固苦しい書き方になっていたらなるべく簡単な表現に直すよう心がけましょう。
詳しくは日本語表記ルールブックに
詳しくは日本語表記ルールブックにもっともっと書いてあります。
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