ライトノベル編集者になるには?たとえばこんな方法もある

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

54863d3dffa7fa5408548945e6c7b423_s

編集者になるのに特別な資格はいりません。

国が定めた認定試験はありませんし、資格取得のための学校もありません。出版社に勤めて、本を作る仕事を任されれば、それはもう編集者です。

ただし編集者になるからには絶対にかかせないものがあります。それは、言葉のプロになるという意識です。編集者は、本と言葉について深く考えぬき、それを生業とする職業です。編集者になる前。そしてなった後も。言葉に対する感覚をできるだけ鋭く研ぎ澄ませることが大切です。

編集者になる具体的な3つ方法

編集者になるには、大まかにわけると3つの方法があります。どれもこの業界にいて実際にこの目で見てきた方法です。

①編集アルバイトに採用される→数年経って昇格

いわゆる叩き上げのコースです。

編集部にアルバイトとして入社し、編集部のサポートメンバーとして陰に日向に働くお仕事を経て、編集者への昇格を目指します。編集部というものは、常に1人はお手伝い要員のアルバイトを求めています。本を作る以外に、こまごました仕事が山積みになるのでそれを手助けしてくれる人員がほしいのです。

アルバイトの業務は多岐にわたります。見本誌の発送作業、電話の応対、来客への対応、コピー用紙の補充、郵送物の整理と配布、書棚の整理、書類のプリントアウト、アンケートの集計、など初歩的な軽作業が主な業務です。(ここに書いてあるのはほんの一部です)最初はこのような誰にでもできるごく簡単なことから始まって、だんだんと求められる業務が増えていきます。

そのジャンルのファンであれば採用に有利

編集部のあつかうジャンルのファンは、アルバイトとして重宝されやすい傾向があります。

ライトノベルの編集部であれば、ライトノベルの熱心なファンは有利かもしれません。それと言うのも、編集者はいつも自分の感性と市場の感性とがズレていないかどうかを気にしています。そこに学生アルバイトはうってつけのサンプルとなります。熱心なファンの立場から、これから世に出そうとする本を忌憚なく批評してほしいのです。

たとえば編集者から未完成の小説を読んでその感想を求められたりします。あるいは、装丁についての率直な意見をたずねられたりもします。同時に、編集者としての素質を試されているとも考えられます。

こうした経験を積んでいくなかで、仕事の早さや正確さ、人当たりの良さ、感性やそれを補強する理論的な思考など、総合的な能力が暗黙のうちに評価されていきます。そして編集長の眼鏡にかなえば、「そろそろ契約を変えようか?」と昇格を示唆される日がくるでしょう。

昇格に際して気を付けたいこと

アルバイトは時給制で契約していることがほとんどですが、働き方によっては社員になると収入が減るかもしれません。その点には注意をしておきたいものです。特に出版社のアルバイトは、いわゆるパートタイムとは違って早朝から深夜までべったり職場にいすわりながら時間をすごすということもあり得ます。下手をすれば、アルバイトだけど徹夜で残業、なんてこともゼロではありません。

ということは、時給制で考えると、ものすごい金額の稼ぎになることもある、ということです。

ところが固定給になったとたん、仕事量は増えるし、責任の範囲は広がるし、大変になったにもかかわらず、残業減るわけでもないのに、アルバイトの時より手取りが下がってしまう、という嬉しくない事態に陥ります。それでもアルバイトのままでは決して味わえない、本を作る楽しさ、担当作家をもって企画を練る喜び、本がヒットする幸福などと、目先の手取り給与とを天秤にかけて、どちらが良いかじっくり考えてみることをおすすめします。

また、なんでも安請け合いする便利屋さんに徹しすぎて、編集者としての素質を磨き忘れてしまうと、いつまで経ってもアルバイトのままということになりかねません。もしそれが嫌なら、編集部の先輩たちにはいつでも「編集者になりたい!」とアピールし続けることが大切です。


②新卒で出版社に入社→編集部に配属

一般的な認識だとこれが正規で王道なコースですが、こと編集者ではちょっと違います。

とにかく編集者になりたい!という人には、意外とリスクの高い方法です。なぜなら、いざ高い倍率を勝ち抜いて出版社に入社しても、必ずしも希望通りに編集部に配属されるとは限らないからです。しかし叩き上げコースなら、絶対に編集者です。編集アルバイトの昇格先が営業部になることは考えにくいです。

稼ぐならアルバイトより正規雇用の編集者が有利

とはいえ、王道は王道。学生アルバイトからスタートした人と、新卒から編集者である人とを比較すると、稼ぎ方の面で差が出ます。23歳の時点で編集者人生をスタートしたAさんは、28歳になる頃までにヒット作をいくつか出し、基本給が5年分アップした中級編集になっています。

一方、28歳でようやくアルバイトから社員に昇格できたBさんは、基本給が下限に多少の色がついた程度の、新米編集者です。ボーナスが出る恵まれた企業であれば、過去5年分をうけとっているAさんと、これから人生初のボーナスをもらえるBさんとで差は広がっています。一生の職業として取り組むつもりなら、無理に裏道を通らず、はじめから出版社の狭き門を叩きましょう。

OB・OGに職業質問ができるなら聞いておきたいこと

もし大学のサークルの卒業生・先輩に、現役編集者がいるならぜひアポイントをとって取材しましょう。

その際、こういったことを尋ねられると進路の設計に有利かもしれません。

  • ジョブローテーションは頻繁に行われるか
  • 編集部以外の部署から、編集部に異動になった例はあるか

この2点は、どちらも「もし出版社に入社しても編集部に配属されなかった場合の救済措置が残されているか」をはかるものです。

職場によっては傾向が偏り、職種をまたいだジョブローテーションを積極的に奨励しているところもたしかにあります。そういうところなら、仮に営業部からスタートしても、いずれ編集部に異動になる目も十分あると考えられます。(当然、編集者になれたあとも、今度はまた違う部署になる可能性も高いですが)。

逆に職場によっては本当に異動というものがなく、一度入ったらずっとそのままの職種が続くという環境もあります。


③編集プロダクションに入社

アルバイトからのスタートでも、新卒採用でもない第3のコースがこれです。

編集プロダクションといって、編集業務に特化した、企画や記事代行などのプロフェッショナルな会社があります。主に出版社からの下請けで、雑誌の紙面を構成したり、発注の内容によっては本を一冊まるごと作るという仕事も入ってきます。ここでは入社=編集者ですので、いきなり編集の仕事がスタートします。

いわゆる「編集者」が、クリエイターと取引するのに対して、編集プロダクションの編集者は、編集者と取引をします。つまり、編集者の編集者です。

編集力を修行するなら編プロは理想的

編集プロダクションのスタッフに求められるのは、即戦力です。

取引のある編集者から「こういう企画を抱えているんだけど、うまく形にしてほしい」と仕事を請け、最適な形で返します。逆に編集プロダクションの側から「こういう企画をそちらの編集部から出してみないか」と提案して、仕事に結びつけることもあります。いずれも企画を実現するための力、企画をうみだす発想力、提案を通すプレゼン力など、さまざまなスキルが要求されます。

編集プロダクションで一人前の仕事ができるようになれば、編集業務はもうなんでもできると考えてもさしつかえないはずです。

下請けから元請けへ。業界内での転職を狙える

編集の実務全般をマスターしていれば、出版社への転職に有利です。

実は編集者は出版業界のなかでグルグルと転職をする性質があります。昨日までライバル他社にいたはずの人が、今日から同じ職場で編集者をしているということはままあることです。(実際にはそうでもないのですが)専門性のある職種だと思われがちで、即戦力を補強しようとすると、どうしても現役編集者の転職を採用したくなるという背景があります。

編集プロダクションのスタッフは、その意味では十分に即戦力として扱われるため、まったくの異業種から飛び込んでくる人よりも出版社への中途採用に有利に立ち回れるでしょう。

まとめ

おおまかに分けると、このような3つのコースがあります。

そのいずれに挑むにしても、情報収集は欠かせません。いまでは各出版社はSNSやツイッターなどを運用していることが多く、スタッフ募集の告知はそういった場所で行われることも増えてきているからです。

また、冒頭にも書きましたが言葉のプロになるという自覚は、いますぐ持っても遅くはありません。もともと言語感覚に優れた方は、それだけで編集者になる素質を持っています。

編集者になると、いままで一ファンとして味わってきたさまざまなコンテンツが、急に「商品」としてしか見られなくなることもあります。それは切ないことである反面、物づくりにかかわってご飯を食べていく人になったという証でもあります。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*

CAPTCHA