初心者向け

1.その主人公は本当の主人公か?

小説初心者を抜け出して、最初のライトノベルを書くためには、お気に入りの小説を分析するのが良いという話をしました。じっくりと選び抜いたお気に入りの3冊を道標に、研究をはじめましょう。さて、とにもかくにもまずはその3冊を読むことから始まるのですが、読み方にも工夫が必要です。最初は「キャラクター」について注目してみましょう。

 その主人公は本人に主人公か?

物語には主人公というものが存在します。
その作品における主役であり、読者と作中世界をつなげる橋渡し役でもあります。
ライトノベルにはヒロインも欠かせません。
可愛い美少女のいろんな姿に萌えることは、ライトノベルを読む醍醐味です。
悪役だって大切です。
魅力的な作品に、魅力的な敵はつきものといえます。
しかし、それらの主人公、ヒロイン、敵は本当にその役割を担うにふさわしい存在なのかと疑ったことはありますか?読者はなにをもってして、そのキャラクターを主人公とそうでないものとに区別するのでしょう。手元に用意した3冊を、まずこのような視点で読み進めてみてください。一般的にいわれている主人公、ヒロイン、敵の主要3役は、はたしてほんとうに「主人公」で、「ヒロイン」で、「敵」なのか。それを見極めながら読み進めることで、いざ自分がライトノベルを書く時のキャラクター造形力を養うことができます。

主人公を「主人公」にする条件

 商業的に成功している作品は、この点にブレがありません。主人公は堂々と主人公をしているし、ヒロインは間違いなくヒロインとして振舞っているし、敵も敵として魅力的に描かれています。これら3役を3役たらしめている条件は、たとえばこのようなものがあります。

主人公の条件

主人公は、なにかしらの特性をもっています。
性格上の特徴か、能力上の特徴か、あるいはその両方か。立場が極端で特徴づいているというパターンもありです。
いずれにしても、なにも特性がないキャラクターは主人公にはなれません。
平凡な一般人という設定が与えられたキャラクターでも、隠された特別な力があったり、特異な人間関係を構築していたり、予期せぬ出会いから不思議な力を獲得するなどして一般人からはみ出す部分をもつことで主人公になれます。
特徴は必ずしもポジティブなものでなくても大丈夫です。弱点もまた特性のひとつで、それがあるからほかのキャラクターよりもひと際活躍できるとすれば、それは立派に主人公の条件を満たしています。
どこからどう見ても完全無欠に何にも特徴がないふつうのキャラクターもいるじゃないか、という声もあるかもしれません。しかしそれはまやかしです。主人公にみえて主人公ではありません。その場合は「特徴があるのがふつう」という世界観が構築されていて、特徴がないキャラクターが相対的に「ふつうじゃない」ことになっているはずです。

ヒロインの条件

ヒロインは、かならずピンチとともに存在します。
のっぴきならない状況に置かれるか、すでに置かれているなどして、助けてあげなくてはならない人物として描かれるキャラクターだけがヒロインと呼べます。
容姿がとびきり可愛いとか、立ち居振る舞いが魅力的であるとか、しぐさが萌えるであるなどといったことは、実はヒロインであるかどうかとは無関係です。いっそ性別さえ無視してかまいません。主人公が切実に「助けてあげなければ」と思ってしまう設定をまとっていれば、たとえ男でもヒロインの条件を満たしています。

敵の条件

敵は、計画性か衝動性、そのどちらかをもってヒロインを害するキャラクターです。
これ以外は、本質的には敵とは考えなくてOKです。ポイントはヒロインを害するかどうか。この一点だけ、注意して読み進めてください。
この視点に立つと、1巻だけ読んだかぎりではあてはまるキャラクターが存在しない場合もあります。明確に登場せず、しかしおなじ世界のなかのどこかにはいる。そんな、仄めかすような描かれ方をする場合もあるでしょう。
衝動的な目的でヒロインを害そうとするキャラクターは、登場したきりすぐに退場するような、その場だけの敵になりがちです。対して、長期的な計画をもって戦略を練り、シリーズ複数巻にわたってヒロインを害すべく行動するキャラクターは、作品を代表する敵として認識されやすくなります。いま分析している本には、どちらのタイプの敵が立ちはだかっているか、じっくり見極めてみてください。

条件にあてはまるキャラクターを目指す

自分が小説を書く時に活かせる「主人公の条件」「ヒロインの条件」「敵の条件」を掴めたでしょうか? ただ漫然と主人公の立ち位置においただけのつまらないキャラクターにならないために、ちゃんと主人公としての格をもたせることに意識をはらいましょう。
お気に入りの3冊の分析法、続いてのポイントは

その出会いで読者をドキドキさせられるか?ラノベヒロインとの遭遇シーンに関する基礎知識

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お気に入りの3冊の分析法その2です。

手本とする3冊を読み進めるにあたり、「主人公とヒロインの出会い方」に注意をむけてみてください。あなたの作品をもっと輝かせるために、どのように主人公とヒロインを出会わせれば良いか、その考え方を解説します。

ヒロインとの出会い方に魂をこめる

優れたライトノベルは、ヒロインとの出会いで読者の心を掴みます。

出会い方はそのライトノベルの名刺代わりとも言え、どう出会ったかで口コミの広がり方にも影響が出るほどです。涼宮ハルヒとの出会い方を思う浮かべてもらえば分かるかと思いますが、強烈なインパクトをともなってヒロインが登場するのがお約束です。ただふつうに出会うのではなく、ドラマチックな出会い方で読者にヒロインを印象づけることを意識してみましょう。

その出会いで読者をドキドキさせられるか?

出会いを印象づける方法は実は単純です。読者をドキドキさせればいいのです。

読者をドキドキさせる出会い方は、おおむねこの3パターンに分類されます。

「脱衣」と出会い

 

エッチなハプニングとともにヒロインに出会う、うれしはずかしサービスシーンの出会いです。

ラブコメなど、美少女の萌えを売りにする作品との相性が良く、ライトノベルでよく使われる手法です。人は性的な興奮をおぼえると自然と心拍数があがります。したがって、エッチなハプニングとともにヒロインと出会うことで心拍数があがり、ドキドキとしたドラマチックな出会いを演出できるのです。

「危険」と出会い

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巻き込まれた危険なバトルのなかで、ヒロインと出会いを果たすパターンです。

バトルが主題となる作品の場合、作品の見どころとヒロインとの出会いを同時に提示できるため構成が引き締まります。バトルの派手さ、ダイナミックな効果の応酬で命を危険にさらし、読者をハラハラドキドキさせることができれば狙いはバッチリといえます。バトルの設定に凝るよりは、ヒロインか主人公のどちらかを徹底的に追いつめ、危機感をあおることで読者の心拍数をあげるほうがてっとりばやく、効果的です。

「予想外」と出会い

身構えていないところに急に解決不能な困難を任されると、人はドキドキするものです。応用できる範囲はひろく、上記2つと組みあわせて使うこともできます。急な依頼、予期せぬ変更、思いがけない誤算、予想外の無理難題、想定外のシチュエーション、ありえない場所。そういったものとヒロインの登場が密接に関わっていれば、読者はドラマチックな出会いを楽しんでくれるでしょう。

すでに出会っているパターンは?

作品の主要人物が、自己紹介をとっくにすませている関係である場合もあります。こうした作品では明確には描写されないものの、過去編をほのめかしたり、回想のなかで断片的に提示するなどして「いかに出会ったか」を読者に知らせる手法がとられます。

その場合、優れたライトノベルほど伏せられた過去編に興味がひかれるように工夫がこらされます。

読者の想像をかきたて、どうやって出会って、どんな経験を経て、いまの二人になったのだろう?と知りたくさせれば大成功です。読者に興味をもたせること、ひいてはそのキャラクターに恋をさせることがライトノベルをうまく書くコツです。

初心者でも出会いをおろそかにしない

お気に入りの3作を、「主人公とヒロインがどうやって出会うか?」に注目しながら読んでいくと、そのシーンだけで十分面白いと感じられるはずです。なんとなく出会わせるのではなく、出会い方にも作者なりの意図をもつ必要があることが分かっていただければ、次の段階に進めるかと思います。

次→ 3.主人公の最大の強みと最大の弱みは?

作家人生の第一歩!お気に入りの3冊を決めてみよう

作家になりたい!そう思ったら、まずなにから始めたらいいでしょうか。意外とそんなはじめの一歩につまづいて、せっかくのやる気がしぼんでしまう……なんてことも。でも、ご安心ください。ゼロから小説を書き始めるにあたって、なにをすればいいのか具体的に説明します。それは、好きなライトノベルを3冊選ぶことです。

いきなり書き始められない!

作家になりたければ、小説を書けばいい。 そんな当たり前のことは言われなくても分かっているけど、いざ書き始めようとするとなにから手をつければいいか迷ってしまうものです。そんな、「いきなりは書き始められない!」という慎重な小説初心者の方にむけて、おすすめの方法をご紹介します。

「読むこと」です。

書けないなら、まず読むことから始めましょう。ライトノベルを知るには、ライトノベルを読むがいちばんです。

なにを読めばいいか

書く前に読もう、と言われてもどれを読めばいいか迷うかもしれません。

男性向けライトノベルレーベルだけにしぼっても毎月100~130点ほどの新刊が発売されるライトノベル大乱立時代において、小説執筆のスタートアップにふさわしいものを選ぼうと思ってもよく分からなくなるのは当然のことです。新旧あわせて世の中にあふれるほど存在するライトノベルのなかから、どれを、何冊くらい読めばいいのかなんて分かりませんよね。そこで、無理やりにでも指針を設けてしまいましょう。すなわち、ある条件にそって3冊を選びぬくのです。

小説初心者が手にとるべき最初の3冊

無数にあるライトノベルの中から、小説初心者が最初に選ぶべき3冊はこのような条件にもとづいて探してください。

  1. 10巻以上続いている人気シリーズの第1巻
  2. 直近3ヶ月以内に重版がかかった(品切れが起きた)新シリーズの第1巻
  3. 自分の直感で決めた自由な1冊

この3つの条件を別々に満たす、最強の3冊を選びぬきましょう。もちろん、すでに読んだものの中から選ぶのも大いにありです。

今日までの読書量が多い人ほど、3冊に絞りきれなくて悩むかもしれません。あれもいい、これもよかった、それだって捨てがたい。それでも涙を飲んで3冊にしぼりこむことを強くおすすめします。この3冊は、これからの作家人生を方針付ける大切な3冊です。多くても少なくてもいけません。まずはとにかく3冊です。どうしても決めあぐねてしまうという方は、たとえばこんなライトノベルはどうでしょうか?

10巻以上続いている人気シリーズの第1巻から選ぶ

10巻以上も続いているのは、人気シリーズの証です。たくさんの読者に支持されてこそ、シリーズは巻数を重ねることができます。


とある魔術の禁書目録(電撃文庫)


魔法科高校の劣等生(電撃文庫)

俺の妹がこんなに可愛いわけがない(電撃文庫)

デート・ア・ライブ 十香デッドエンド (富士見ファンタジア文庫) 

ゼロの使い魔 (MF文庫J) 

バカとテストと召喚獣(ファミ通文庫)

直近3ヶ月以内に重版がかかった新シリーズの第1巻から選ぶ

直近3ヶ月以内に重版がかかった作品は、絞り込みは容易です。毎月30~50タイトルくらい(あるいはもっと!)完全新作が生まれていくなかで、重版の日の目が見られるタイトルはごく限られているからです。2016年10月現在で探すと、たとえばこのような作品が条件にあてはまります。どれも2016年現在、市場で反響があったウケるライトノベルです。作家人生の第一歩に必ず役に立つ作品なので、1冊選んで読んでみましょう。

魔力ゼロの俺には、魔法剣姫最強の学園を支配できない……と思った? (MF文庫J)

今日から俺はロリのヒモ!(MF文庫J)

俺が好きなのは妹だけど妹じゃない (ファンタジア文庫) 

自分の直感で決めた自由な1冊から選ぶ

これは例示しても意味がないですね。それでもどうしても決められないという方のために、いくつか考え方のヒントを。

  • いちばん心に残っている1冊
  • いちばん人にすすめたくなった1冊
  • いちばん泣けた1冊
  • いちばんマネしやすそうな1冊
  • いちばんツッコミどころのある1冊
  • いちばんあらすじだけで興味がひかれる1冊
  • いちばんなんだか分からないけど気になる1冊

などなど。

どんな本でもいいですが、自分のなかで「いちばん」と呼ぶにふさわしい、とがった特徴のある作品を「最初の3冊」に加えるのがおすすめです。

最初の3冊を選んだら

いかがでしたでしょうか?お気に入りの3冊は決まりましたか?ゼロからはじめて初心者を脱出するのに必要な選択です。納得いくまで選びましょう。うまく決定できましたら、続いてその3冊をどのように執筆に活かすか、具体的に解説します。

続き→先行書からオリジナル作品を創るには?